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執筆者の写真成田悦子

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳


 「僕は戻らなくちゃあ。」彼は言った。「僕は彼女にその全てを任せてはいけない、ベンドゥリクス。」そして彼は僕たちが一年で互いを知り尽くしたかのように、僕の腕に彼の手を置いた。彼は彼女からその手真似を習ったのか?結婚した人々は、互いに似て来る。僕たちは一緒に歩いて帰り、僕たちがホールのドアを開けた時、僕は、キスからか、離れようとする二つの人間が、小部屋から鏡の中に写ったのを見た。―一人はサラーだった。僕はヘンリを見た。

 彼は見なかったのか、それとも気にしなかったかのどちらか―それとも他に、僕は考えた。何とも不幸せな男であるに違いない。

 サヴィッジ氏はそのシーンを妥当と考えただろうか?僕は後で知ったのだが。彼女にキスをしていたのは、恋人ではなく、それは妻が一週間前、有能な水兵と駆け落ちした年金省のヘンリの同僚の一人だった。彼女は、その日初めて彼に会った。僕はそれほど断固として余地を与えられなかった。彼が未だにそのシーンの一部を占めてしまうのは、好ましくないように思える。

 僕はあの過ぎた時を、そのままにして置きたかった。僕が1939を書く時、僕は僕の像の全てが甦ろうとするのを感じる。憎悪は愛情と同じ腺を操作するように思う。それは同じ行動を生み出しもする。もし僕たちが、如何に受難の物語を演出すべきか教えられなかったら、クライストゥを愛したそれが、嫉妬深いデュウダス(ユダ)か、或いは小心なピーター(ペテロ)だったかどうか、単に彼らの行動から言えただろうか?

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